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kt先生の科研費イベント最終日。二日前は、Maliksさんとuさんと立川で夕飯。一昨日は、uさんのお付き合いで、海外研究者のエクスカーションに同行。英語を久々にしゃべるので、ほとんどしゃべれないのだが、喋ろうとする意志はあるということだけは見せておいた。昨日は科研費イベント一日目、マリクスさんの発表だけ聞く。カントの革命観、とくに憲法制定国民議会と国王処刑について。質問するチャンスを逃したが、working dinnerの方でコメントを。なんというか、俺も英語で書く意味があるのではないかという感じを受ける発表だった(婉曲表現)。

さて、今日の目玉はPeter Niesenの報告。カントの世界市民法の規範には二つの(異なる、融和しない)源泉があり、例えばそこから移民・難民の権利といった現代的な問題への洞察をフルに引き出すのは難しいのではないか、というもの。私もそう思う。二つの異なる源泉というのは、一つは土地の根源的共有というアイデアで、もう一つは(現代の言葉で言えば)人類の共通遺産(グロティウスにおける自由海論)というアイデア。カントの世界市民法のなかには、前者から「どこかに存在する権利(right to be somewhere)」が、後者から「コミュニケーションの権利」が引き出されている。ニーゼンが言うように、カントの世界市民法によっては、滞在権と定住権のあいだのギャップは架橋不可能なままだろう。私が質問したのは、カントがよく口にする、世界の限定性、つまり地球が球体であり、地表は無限ではないということが、人々の間に普遍的かつ潜在的な法的関係性をうちたてるという議論が、どこに効いてくるのかということだった。ニーゼンいわく、そちらの論拠は、土地の根源的共有ではなく、人類の共通遺産の方につながっているとのこと。本当かなという気もしないではない。

某学部二年生も殊勝なことに参加しており、現代移民正義関連で質問していた。質問内容はおじさんには難しくてさっぱりわからんかったけど、偉い。俺が二年生の頃は小説を読んでいるか麻雀をしているか愛に耽っているだけであった。

のあと、懇親会。のあと、なんと欧米のカンティアンと立川でカラオケ。やけにハイテンションな皆さんに付き合って、楽しかったのだが、異常に疲れた。先輩のsさんもイタリア帰りで直行して研究会に参加しており、普通に英語も話されていてすげえ。本の計画も順調のようで、嬉しい。

ずっと英語なのも、慣れればあれなのだが、やはりニュアンスに富んだことを言われるとよく分からんし、頭で英作文して喋るということをしなくてはならず、ちょっとつらい。こういうイベントが年に一回くらいあるたびに、英会話やろう、ドイツ語やろうと思うのだが、そのたびに色んなことを言い訳にして逃げてきた。毎日一時間でも継続してやれば違うということも分かっているのにな。悲しい。しかし、KさんもHさんも(女性陣二人)PさんもMさんも無茶苦茶いい人で、それに救われる。Pさんのカラオケ代をおごった代わりに、ハンブルグに行ったときはよろしくね、的な。

 

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フォルストの講演会が明治であり、かつ、前から楽しみにしていたのだが、一昨日までの反動で一切気力が出ず、スルーしてしまう。ファイアーエムブレムずっと夢中。ロバートソンの啓蒙本読了。ざっくりした、まさにvery short introduction。近年の啓蒙思想史研究の紹介が嬉しい。イタリア、というかナポリ啓蒙についての情報が多いのも面白い。英語圏の研究者にしては、ドイツ啓蒙についてもよく頑張ったほうだと思う。

某さんの添削がてら、新しい職場の一年生向け、What is 'argument'的な資料をつくったり、はたまた授業準備したり。5月一周目くらいまではストックができた。

 

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フォルストの弟子とtbtさんらが報告する研究会がwsdであったのだが、華麗にスルーを決めてしまう。行くって言ってたのに申し訳ない。が、メンタルヘルス的に誰にもあいたくなかった。家の掃除を少しだけした。Ulyssesの導入を検討してみたり。

新しい職場から雇用契約書が送られてこないが、研究室の引き渡し可能との連絡は来る。近くの中華でほうれん草チャーハンと餃子5個。

新しい本のためのプロジェクト計画を立てようとしているところだ。

 

Niesenさんの博論。『カントの言論の自由の理論』。言論の自由を核にカントの政治理論を再構築するもので、多分博論かな。 

Kants Theorie der Redefreiheit

Kants Theorie der Redefreiheit

 

こちらはOliver Eberlとの共同編纂の『永遠平和のために』コメンタリー&入門書。『法論』のなかの国際政治関係のものも収録されている。歴史的なコメンタリーもさることながら、おそらくニーゼンさんの主導による解説も、非常に素晴らしい。特に、(今回の報告でも触れていたが)国法・国際法世界市民法の3つのレベルのそれぞれに、暫定的レベルと確定的レベルを区別して捉えているとしているところが、大変啓発された。

Zum ewigen Frieden

Zum ewigen Frieden

 

こちらはマリクスさんの博論。カントをプロイセンのコンテクストに位置づける研究。私の本はこの線でもっとカントと他の論者の論争状況を仮定して読解しており、またもっと哲学的なアプローチに傾斜しているところもあり、また厳密なコンテクストというよりも学説史、自然法学説史に注目しているところなどが違う。

Kant's Politics in Context

Kant's Politics in Context